2018.1.6
今年初出勤の朝、何でもないかのようにその文字列は視界をかすめた。
某テレビ局のデータ放送のニュース欄にあったそれは、我が視界を一瞬かすめ、
すでにボタンを押していた天気予報のページに変わったのだった。
え……?
声を上げてから、背中に神経は集中した。
俺の突然の発声に妻はいつも嫌な顔をする。
あ、などと声を出した時には、大概ロクなことになっていないからだ。
醤油をこぼすとか。
その妻は俺の背後の台所にいた。
けれど、妻の反応は思ったほど鋭くなかった。
意外なほど柔らかかった。
どうしたの?
データ放送の画面を文字列のあったほうに戻しながら俺は言葉を探し、
一拍おいてから言葉にした。
仙ちゃんが死んだって。
「亡くなった」と言えなかった。もちろん「死んじゃった」なんて言えるわけがなかった。
「死んだ」という、一番簡潔な言葉を俺は選んでいた。
あまりの突然の一行に、どんな感情もはさみたくなかったのだ。
* * *
2013年、楽天イーグルスが日本一になった時、我が家では「星野イーグルス」というよりも
「田中イーグルス」の優勝だ、と言った。その感覚はずっと変わっていなかった。
もちろん指揮官の厳しさや、チーム全体の力量が伴わなければ、日本一なんてありえない。
しかしそれやこれやを計算に入れても、やはり「24勝0敗のエースの存在」は絶対的だった。
でもやっぱり、と今ではちょっと思いも柔らかくなった。
星野イーグルスが、あの絶対的エースを存在せしめていたんだろうな、と。
さらにはこんなことも思ってしまう。
中日と阪神でリーグ優勝こそしていてもどうしても日本シリーズでの勝利を果たせずにいた、
しかも宿敵「読売ジャイアンツ」を目の前にしている闘将に、野球の神様が
「田中将大」という大投手をプレゼントしたのではあるまいかと。
他の誰も得られることのない「御褒美」として。
by taroustory | 2018-01-07 17:31 | 東北楽天ゴールデンイーグルス